Hello, From Europe

北欧からこんにちは第22回

あたたかくなり、オープンテラスのカフェでお日さまにあたりながらのティータイムも楽しみな季節になってきました。というわけで、今回のテーマはお茶。コーヒー愛好者の多い北欧諸国ですが、今回は、コーヒー党におされながらも我が道を行く紅茶党にスポットをあて、スウェーデンの紅茶事情をリポートしてもらいました。


本郷若子 (ほんごうわかこ)

1972年10月15日生まれ。1995年にインテリア・デザインと写真を学ぶため、スウェーデンに留学。卒業後、フォトスタジオ、インテリアスタイリスト事務所勤務を経て、現在フリーの通訳/翻訳家。趣味は老舗レストランの昔のレシピ集め、蚤の市をひやかすこと、カフェでぼーっとすること、など。


スウェーデンの紅茶生活 text by 本郷若子
このコラムでも幾度か触れているように、スウェーデンはコーヒー党の国。

コーヒー豆の消費量は世界第2位だというし、スーパーマーケットに行けば、浅煎りに深煎り、スコーネ風ローストやらストックホルム焙煎、ドリップ用に煮出し用……。日本語での「お茶うけ」にあたる焼き菓子、パン類のことすら「KAFFEBRÖD」(コーヒーのパン)と呼ぶくらいだから、とにかくコーヒーが幅を利かせています。

じゃあ、お茶が好きな人はどうしているの、と問われれば、これがなかなか分が悪い。
運が悪いとカフェに行っても日向水のようなお湯に、ティーバッグがどぼんと放り込まれた紅茶一杯がコーヒーよりも高価だったりすることもしばしば。

それならいっそ、自宅で好みの銘柄をじっくり煎れる方がおいしいのは当然で、少数派ならではの熱心な愛好家に応えるかのように、セレクトショップのようなお茶の専門店が街のあちこちに点在しています。
ここ数年のスウェーデンはお茶ブームで、次々に専門店がオープンしていますが、30年以上前からストックホルム、ことにセーデルマルムの地元民に親しまれているのが、ザ・ティーセンター・オヴ・ストックホルム

このお店の一番人気は、スリランカの紅茶商の家系出身で、筋金入りのお茶の専門家のヴァーノン・モーリス氏によるオリジナル、「セーデルブレンド(Söderblandning)」、またの名をBlend of South Stockholm。セイロン産の茶葉にバラやマリーゴールドの花びらやオレンジピールなどでフレーバーをつけた贅沢なブレンドで、このお店の常連さんたちは、「ワインを楽しむように紅茶を愛でる」、これまた筋金入りの愛好家が多い、というオーナーの言葉にもなるほどと頷けます。

1950年代、戦火も落ち着き生活が豊かになりはじめた時代にもお茶が流行したそうで、つらつら眺めてみると、この時期の凝った意匠のテーブルウェアはほとんどお茶の器であることに気がつきます。
グスタフスベリ社のスティグ・リンドベリがファイアンス焼で発表したティーボトルやロールストランド窯のグンナル・ニィルンドのティポットなどは良い例で、実用品というよりはアートピースとしての特徴を持つものが多いのは、そのむかし、お茶が極東からもたらされた贅沢品であったころの名残でしょうか。

一方で、同じころに安価で供給されるようになった、質の良い陶磁器製のティーウェアは、モダンで鮮やかな意匠をまとって庶民のリビングルームを彩り、お茶のもたらす異国情緒や目新しさも手伝って、この時代以降、だんだんとお茶がスウェーデン人の生活に浸透して行くようになります。

お茶が特別なものとされるならば、ひと手間かけておいしい一杯を煎れ、お気に入りのカップで味わいながら、雪が降るのを眺めたり、ふだんは読まない本を紐解いたり……。そんな息抜きをうながす時間を作ってくれるからこそ、熱心にお茶を好む人たちがいるのかもしれません。
 

スウェーデン一口メモ
紅茶を煎れる際に、かかせないのがケトルやポット(もちろん、コーヒーやお茶を煎れるときにも欠かせませんが…)。スウェーデンで長く親しまれてきたのは、Moderna Kök(モダーナショーク)社製で、シグヴァルド・ベルナドッテデザインのステンレスのケトルや、kockmus(コクムス)社のコーヒーポット。日本製や他のヨーロッパ製の中間をとったようなゆるやかにモダンなデザインは今でも新鮮でおすすめ。ヴィンテージショップで状態のいいものが見つかったらぜひチェックを!