『青の時間 THROUGH THE LOOKING-GIRL』
女優として活躍する清水ゆみ、写真家としても才能を発揮する東野翠れんをはじめ、気鋭の写真家・永瀬沙世が親交ある女の子たちを見つめた3年間。彼女たちのプライヴェートな空間で、瑞々しい魅力を引き出してゆく独特の物語。
著者:永瀬沙世 特別寄稿:堀江敏幸 アートディレクション:小野英作

永瀬沙世インタヴューの後編は、写真家永瀬が誕生するまで、そして写真家のプライヴェートへと話題が進みます。そこにいるのは、ひとりの女の子がどのように思春期を過ごし、明るい場所を垣間見た経験を活かしながらも別の道を歩む、一筋縄ではいかない芯の強さと信念をもったクリエイターの生き様があります。そんな大げさな、と思うなかれ。揺れ動く感情と、それを冷静に捉える目の両方を持っている女の子は、どこにでもいそうなんだけど、やっぱり特別。そして、努力の人でもあった。

永瀬沙世/ながせさよ Profile
1978年兵庫県伊丹市生まれ。神戸女子大学卒業。「流行通信」「H」「Lingkaran」など雑誌の他、アーティストポートレート、坂本美雨、THE BACK HORNのCDジャケットやMusicVideoなどで活動。身辺に位置する事物を主題に写真を撮り続ける。この9月には『シャッター&ラブ 10人の女性写真家たち 』(INFASパブリケーションズ)に参加し、9月8日よりパルコミュージアムで行われた展覧会でも人気を博した。
http://www.nagasesayo.com/
永瀬沙世写真展『青の時間 THROUGH THE LOOKING-GIRL』
12月1日(金)より12月12日(火)まで、青山ブックセンターHMV渋谷店のギャラリーにて写真展開催!
開催場所:青山ブックセンターHMV渋谷店 ギャラリースペース
〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町24-1 高木ビル6F
Tel.03-5428-1775
開催期間:2006年12月1日(金)より12月12日(火)まで
10:00〜23:00 年中無休 入場無料
(12月1日は12:00より、最終日は17:00まで)
共催:プチグラパブリッシング/青山ブックセンター
協力:FLAT
永瀬沙世×森本美絵 『女性写真家の現在』トークセッション開催!
『シャッター&ラブ―10人の女性写真家たち―』にも参加し、気鋭の若手写真家として定評のある森本美絵氏をお迎えし、トークイベントを行います。新世代の女性写真家二人による、“女性写真家の現在”をテーマにした本音トークは必見です!
■日時:2006年12月2日(土) 16:00〜17:00(開場:15:40〜)
■会場:青山ブックセンターHMV渋谷店店内ギャラリースペース
■定員:30名様 ■入場無料 要電話予約
■電話予約&お問い合わせ電話: 青山ブックセンターHMV渋谷店・03-5428−1775
■受付期間: 11月20日〜12月1日 10:00〜23:00
森本美絵/もりもとみえ Profile
1974年岡山県備前市生まれ。東京造形大学卒業後、フォトグラファーとして活動開始。ランドスケープを中心に作品制作に取り組む傍ら、独自の空間感覚を活かし、幅広い分野で写真を発表している。最新写真集に、宮崎あおい・将兄妹がインド・ベンガル州を旅するエッセイ付き紀行写真集『たりないピース』(小学館)、懐かしい鉄道路線で旅する少女たちを撮った『キミト、ドコカヘ』(マーブルトロン)などがある。

一物心ついた頃ってどんな子だったんですか?
自分にこれといった長所がないなってずっと思ってた。周りからはそうは見られてはいなかったから、余計に本当に何にも出来ないんだって。
一それは何故?
例えば、自分は結構努力家だったから成績はいいんだけど、自分の限界を感じるんですよ、才能の限界ってこうなんだって思って。ドッチボールをやって、努力であるところまで行くんですけど、そこからすごい上手い子には勝てないって限界を感じて。試すこと全てにそれを感じて。それで自信がなかった。
一早熟過ぎるからかな。普通ならそこまで考えて思い悩むまでに至らないのでは。
すごく独立心が強かったし。多分、兄と姉が私と年が離れていて、あれが普通だと思っているから、自分が(同じように)出来ない。でも追いつきたかったんだと思います。すごく可愛がられていたらしいんですけど、自分ではあんまりわかんなくて。
一それはいつ頃のこと?
小学校の時ですね。だから10代は青過ぎたんですよ。もやもやしていました。今は楽しいですけど。
一しかし当時はmc Sisterのモデルもされていて、まわりの印象とは全く違うんですね。
中学校入ってからも成績は結構いい感じなのに、でも結局何にも取り柄がないやって思って。外見も本当に自信がなくて。でも友だちとの間で流行っていたんです。モデルっていうものが。それで友だちがオリーブに出して、私がシスター出すっていうので。私はオリーブ好きだけどオリーブ顔じゃないし、性格もオリーブじゃない。一方で友だちはすごくオリーブっぽかったんですよ。すごく仲のいい親友がいて、毎日毎日そのこの家でレズみたいに過ごしていて、『ひなぎく』とか一緒に見ていたんですよ。二人でルーズリーフを作って、自分のワードローブとかを全部絵で描いて、例えばギンガムチェックのシャツとか20個くらい描くじゃないですか。それを交換して、貸し合いっこするんです。スタイリストみたいなことを二人でしていて。写真を始めたのもその頃で、お父さんのペンタックスの一眼レフがあって、その子も持っていて、初めモノクロから入って、お互い目の周り真っ黒にして、撮り合うみたいな。『ひなぎく』(註)観た後に撮り合う。
(註:『ひなぎく』(66)/チェコスロヴァキア時代に撮られたヴェラ・ヒティロヴァ監督によるガールズムービー(ちなみに監督も女性)。女の子二人のポップでシュールな日常を、技法的にもユーモラスでアイデアたっぷりに描きながら、それこそが反体制であった傑作映画)
一それは楽しそうですね! まさに映画の世界そのまま。
どんどんエスカレートして、本当にその時は純心であやしい二人じゃないんですよ。楽しくて学校帰りに一緒にふとんで昼寝したりして、タオルケットの中に二人で入っていたら、その子の親戚がドア開けちゃって、驚いて出て行っちゃったの。その時なんかいけないことしてるのかなって二人で思っちゃって。その女の子とは全然気まずくなんないんだけど、現実的に大人から見てちょっと引いちゃうことをしているのかもっていうことは、その時初めて気づいた。『エコール』(註)っぽいこと。小学校低学年の頃の話です。近所の男の子連れ込んで来て、女の子二人でその男の子に泥団子作らして、あそこのポスト入れて来いとか。あと遠くに連れて行って目をつぶっていてって言って、バーって逃げて帰って来て迷子にさせたりとかぐらい(笑)
(註:『エコール』(2004)/『ミミ』(96)でセンセーションを巻き起こした女性監督ルシール・アザリロヴィックの長編デビュー作。少女のみの寄宿制学校での秘密めいた生活を描く。現在シネマライズ他にて絶賛公開中。ギャスパー・ノエは公私にわたるパートナー)
一しかしモデルとの二重生活は大変だったのでは。
私がモデルになったら、ある友だちは引いてっちゃいました。最後には「変わった」っていう手紙が来て。すごい悲しくて。でもその子が元々応募してくれたんですね。だから他薦だったんですよ。その子にも推薦者としてプレゼントが送られるんですよ。でもいらないって言われて。で、その子はオリーブ落ちちゃって。すごいショックだった。高校三年間の間に私は何回も電話するんだけど、そういうのが余計向こうにとっては嫌だったみたいで。「私は何も変わっていない」って電話して、たまに手紙とか送るんですけど。それが当時は一番辛かった。だから高校に行っているときも自分がモデルをしてることは隠していたし。すぐバレちゃったけど。でも傷ついたことがすごく大きくて、自分はそういう態度とかそういう会話を一切しないでおこうって。人はモデルっていうことをしているだけで、見方が変わっちゃうんだって思ったから、カメラマンになってからもモデルしてたことを言っていなかったです。最初にシスターに出た時に誰にも言っていなくて、合格したことも誰にも言っていなくて、最初に私が出た時は自分も見てなかったんだけど…。みんな知ってて、それで私に言ってこない。でもみんな嬉しそうで。
一羨ましかったのかな。
いや、こんな伊丹(兵庫県伊丹市)からモデルが出たっていうのがあったんだと思う。伊丹なのにこんなところ出られるんだっていう。あんまり嫉妬とかひがみとかは受けなかったんですよ。
一じゃぁ良かったじゃないですか。
してるっていう事実はすごく楽しかったんですけどね。人と会えるし、いろんな職業を見れるし。ただモデルとしての自分に自信がなくて、掲載されたものをあまり人に見られたくなかった。
一なんと、それだと見られる仕事がダメじゃないですか。
ダメですね。本当に向いていないと思います。だから中学以降はコンプレックスの固まりでした。思春期特有のものじゃないかな。今だったら撮られて不細工になってもそんなに傷つかないと思うんですよ。外見だけですべてを語られちゃうのがすごい嫌だった。だからモデルっていう職業をいまだに逆に尊敬しちゃう。モデルでやれている子とかモデルで才能がある子は。外見だけでその人の存在感を見せられるっていうのが。だからたぶん私はこの子たちをモデルとしてじゃなくて一人の女性として撮ってるんだと思う。外だけで語られていないんだって。
一写真は子どもの頃からよく撮ってたんですか。
はい、自分と同世代の友だちと。周りにどんどんかわいいこの友だちが増えていって嬉しくて嬉しくて。お父さんがペンタックスを持ってたのでそれを借りて撮ってましたね。hiromixブームだったから、BiG mini買ってみたり。楽しかった。
一当時と今と、作風は変わっていますか。
変わっていないですね。友だちをわざと距離を置いて撮ったりしていたから。当時から。やっぱり夫婦でも友だちでも恋人でも一緒にこうやってしゃべっているときって意外と相手のこと見えていなかったりしてるから。ちょっと距離を置いて、例えばその子が海外に行っちゃったりすると、その子のことが逆に見えて来たりすると思うんですよ。だから近くでスナップを撮ってると何にも見えない気がして。ひと呼吸、間を入れるみたいな。よくあるじゃないですか、旦那が出張に行くとありがたみがわかるとか。あんなに喧嘩してたのに、行った瞬間に寂しくなるみたいな。友だちとかも外国に行ったり引っ越したりすると、すごく愛しくなったりとか。三日間恋人と会えるとすると、わざと真ん中飛ばして会った方が、その人に会える新鮮さってあるじゃないですか。だから私は明日も会えるっていわれると、好き過ぎると明日会わない方がいいなって思っちゃうタイプ。だから好きな人ほど間を空けちゃうんです。
一押したり引いたり大変だ。初恋とかはいつ頃だったんですか?
初恋…。私はあまりそういうのに興味がなくて。女の子といる方が楽しくて。恋するのも女の子とキャッキャするために恋していた。○○くんと5回目が合ったっていうこと友だちに言いたいが為に恋をしていたというか。女の子ってみんなそうですよ。男の子とつき合うじゃないですか。高校生くらいになって、本当に一緒にいてもイライラしていて。もう男って馬鹿って。こんなにイライラするなら女の子と一緒いた方が楽しいなって。
一そんなぁ…。男の子の純情もわかってあげて欲しいな。
言いたいこと言わないし、恥ずかしがっているし。もう何が言いたいの? って。例えば歩いていて、この瞬間何か言って欲しいのにって時に黙っているとか、手をつないで欲しいのにもじもじしている瞬間を見たりするのがすごく嫌で。10代の頃の話ですよ、今じゃないですから。ただ大人の中にある少年の部分はすごい好き。
一ファザコン的なところがあるんですね。
そうだと思います。多分。お兄ちゃんが7歳離れているんですよ。だから男の人はそこから上しか知らなかったから、それを基準に生きているわけじゃないですか。それで同世代の男の子を知ってビックリしてとまどっちゃったんです。自分から好きだとか言っときながら。
一いやいや、少年には荷が重いんですよ。女の子の方が早熟だから(苦笑)。モデルやってる女の子だったらそれだけで緊張しちゃうと思うもの。ましてや女の子は大人の仕事の世界も知ってるわけだから。
そうですね。
一写真家を目指したいと思ったのはいつ頃の事だったんでしょう?
まじめで普通の子だったから、モデルとかしていても、大学行って普通の人になろうと。普通に生きていこうと思ってて。私、農学部を目指していて。生物が好きで、手先が器用なのと、あと機械とかも説明書見なくても使えるから。偶然入った高校が進学校で厳しかったんです。今でもうなされるときは高校生の自分なんですよ。本当に偏差値で計られていた感じがして、朝行くと漢字ドリルで、就令終わると英語の単語テストで。学年に3クラスしかないんですけど。先生も進学率上げるためにあせってて。私も国公立理系コースっていうのに行っていたからそこで写真がやりたいなんて口が裂けても言えなかったんですよ。だから親も喜ぶかもしれないと思って。
一ご両親は理系を目指して欲しそうだったんですか。
目指して欲しいっていうか、理系の知識が私は結構あって、それをすごく喜んでたから。キュリー夫人だって小学校の頃からおだてられていたから、お父さんが喜んでくれるんだったらみたいな。高校の入学試験で宇宙飛行士になるって面接で言ったりしていて。向井さんみたいにって。夢ばかりいつもでかかったんですよ。
一一方で写真をコツコツ撮って、技術も磨いていた?
技術は、ちゃんと勉強してましたね。偶然まわりにいた人たちが堅い人が多かったんです。編集の人たちも。だから甘くないっていうのをすごく聞いていたから、カメラマンもコマーシャル畑の人ばかりじゃないですか、シスターは。とりあえず高校生の時や18、9歳の時は片っ端から本を買って、全部暗記して、ノートに受験勉強みたいに括弧つけて、そこに赤いペンで書いて赤いシートで隠して読むみたいな(笑)。それを6冊くらい作って。受験勉強みたい。その後、個人スタジオでアシスタントしたり…。
一写真の勉強でそんなことやる人いるんですね(笑)。とにかく自分にとっては写真だ! とちゃんと思えていたのは素晴らしい事ですね。
最初からプロでやろうって思っていました。独立心旺盛で、自立したいのがすごくあって。親のお金をあてにせずに、どう東京で生きて行くかって考えていたから。でもモデルの頃に経験したのは、才能がないとある程度のところまでしかいけないっていうのが分かった事で、いろいろやって私には写真だけだなって。写真は機械と芸術じゃないですか。私理系だから機械が得意。あと小学校の頃に絵を褒められたっていうのがあって。うちの兄弟全員芸大系だったから。上の二人にお金が掛かったから、私は普通の学科に行かなくちゃって勝手に思っていたんだけど。ただ、写真だけは何か行けると思ったんです。多分本当は何でもよかったんですよ。音楽でも小説でも演技でも…。写真。
一自分の目でそのまま対象を見るのと、カメラを通して見るのとで、何か違ったものに見えることってありますか?
カメラを通して見てない気がする。
一ただ感じたことを定着させているってことなのかな。
もちろん目をつぶっているわけでもないんですよ、ピントとかあるし。でも見ているようで見ていないのかもしれない。
一感覚的にはよく理解出来るんですけど、それを学ぶのは無理だな(笑)
やっぱりちゃんと見なきゃダメだなって思った時期があって、視野率100%ってカメラを使うべきって思ったんだけど、ほとんどのプロ用じゃないカメラって96%くらいなんですよ。覗いたのより一回り小さく写るんですよね。こういうのダメなんだって思って、ちゃんと物事を見て、自分の中ではっきりと責任をもって見たものを、ちゃんと写真で出さなきゃと思って100%のカメラに変えて厳密に撮るようにしたら、今度は自分の中のコントロール下でしか見れてなくて、何もミラクルが起きない。あ、あの時のあの顔とか全部覚えているし。あの角まで入れていたなっていうのも厳密で。でもそれは何か自我の押しつけだなとか思って。
一今使われているカメラは何ですか?
いろいろ使ったけどやっぱりニコン。合います。日本のカメラって合うなって。外国のカメラや特殊なカメラって発色が良かったり、雰囲気良くかわいく写ったりとか。なんか良く写っちゃうから、逆に嘘っぽく感じちゃって。日本を撮るなら日本のカメラって行き着いちゃったんです。
一空気感みたいなものですか。
見た通りに写る気がするから。気休めなのかもしれませんけど。ただ二つのカメラを並行して使っていた時があって、そうするとやっぱり外国のカメラは、すごくドラマチックに写ったりするんですよ。コントラストついたりして。なんか違うなって思って。普通でいいんだよとか。描写でそんな特別なものを入れたら他の所が薄まるなって思って。
一単純に感覚的な事でもないんですね。
はい。こういうものっていうのは見えているし、私の中ではそこに物語があると思って撮っているし。感覚だけでやっていないと、すごく自分では思っている。周りには感性で、とか言われているけど、違うのにっていつも思う。
一ただ出会い頭で撮っているのではないってことですね。
写真を撮る時はすごく出会い頭、感覚なんですけど。撮るまでと、撮った後のセレクトはすごく考えている。セレクトはとても大事。
一撮る状況で意識していることはありますか? ファッションなんかでスタジオだと音楽をガンガンにかけて撮る人とかもいますよね。
音楽は好きだけど、雰囲気で盛り上げるために流すのは好きじゃないんです。写真も雰囲気写真って思われるのはすごく嫌だし。それは周りが決めることだけど。デートの時とか、車でシーンとしているときにわざわざボリューム上げたりとか。あれもすごく苦手なんです。このシーンがいいんじゃんって。このシーンとしている中から生まれてくる緊張感がすごくいいのに、FMつける? とかって。もう! って(笑)
一個人的には激しく共感するけれど、なかなか耐えきれない人が多いのでは…
その耐えきれないのを見るのがいいんです。ギリギリの耐えきれないのをちらっと見るのがいい。だから写真を撮るときもシーンとしていたり、ふざけていなかったりしている方がいい。雰囲気に流されるのがすごく嫌だから。例えば相手が緊張するじゃないですか、その時にわざとポップな音楽をかけると緊張しなくなるけど、そういう状態で撮るのはすごく嫌で。あと午後の昼下がりにわざわざ昼下がりっぽい音楽かけて撮るのもすごく嫌です。それならチュンチュンチュンとか小鳥が鳴いてる外で撮ってる方がいい。
一手強い。
手強くないですよ。だから同世代の男の子が苦手だったんです。
一しかしこの話、写真家を目指す人が学ぶのは難しいところもあるね。
何も学べることはないです。
一いやいや(笑)、絶対勉強しなきゃ出来ないっていうのは充分わかりました。
はい。
一いろいろ話してみて、永瀬さん自身が、今とても充実してきているんだと感じますね。見えているもの、対象の捉え方が安定してきてるんだなということがわかります。
でも不安もあります。つい女の子ばかりの気持ちを守っちゃうっていうところがある、写真を撮って。あと、男の人にはかなわないって根本は思っているんですね。尊敬しているんです。男の人を。
一多分それは、恥ずかしい気持ちの裏返しですよね。だからこそ写真を見ていて、こんなところを見せていいの? って感じてドキドキしちゃうんですよね。
写っている彼女たちは全員、男の人たちの影が映っているんだと思います。それはすごく思います。その相手とかはよくわかんないんですけど。敢えて聞かない方が写真に写るなって。写っている時の、その時好きな人であったりっていうのが絶対写っている。昔のアルバムの自分の写真見て、この時この人とつき合っていたとか思い出すのとすごく似ている気がする。
一堀江敏幸さんはそういう感覚に突っ込んだ事を寄稿してくださいましたね。
そうですね、びっくりしました。実はすごく仲のいい男の子にいきなり呼び出されて、俺は写真集を買わないって言い張ってて。仲いいから言われるんですけどね。立ち読みしたらしくて、今飲んでいるから来いって言われて、「俺はショックだった。お前はこういうことを考えているんだ」って。「何も考えていないと思っていた」って。「俺は君の写真の1枚分も理解していなかった」って言われて。別に何にもないよって言ったら、堀江さんの文章読んだみたいで、「堀江さんは沙世ちゃんに会ったことがないのに、僕は何回も会ってるのにこの何行も気づいていなかった」とか言われて。ほんとバカだなって思って、酔っ払っているからうっとうしくて帰っちゃった。でも男の子は面白いなって思った。
一なんというか、付き合ってる彼女がこの写真を撮られてたら、なんか悔しいでしょうね(笑)
周りの男友達とかあんまり言ってこなかったですね。女友達は結構言ってくれるけど。複雑みたい。結局被写体の全員みんな共通して言えるのは、みんな女性的魅力がある。モテる。モテる子ばっかり。
一男からすると、こういうのを晒しちゃいけないって思うんですよ。自分は見たいんだけど、他の人に見られるのは嫌だっていう独占欲。
本人たちは出す気満々ですよ。
一女の子はそれでいいんですよ。自分で意識しちゃったら違うもの。その表情は俺のものじゃないの? っていう男の身勝手であって。
みんな知らない表情を持ってるんですよね。でもまわりは全部わかった気になっちゃってて。でも本当は、彼氏とか、親も知らない。
写真はすべて写真集より
聞き手・構成:伊藤 高
『青の時間 THROUGH THE LOOKING-GIRL』
女優として活躍する清水ゆみ、写真家としても才能を発揮する東野翠れんをはじめ、気鋭の写真家・永瀬沙世が親交ある女の子たちを見つめた3年間。彼女たちのプライヴェートな空間で、瑞々しい魅力を引き出してゆく独特の物語。
著者:永瀬沙世 特別寄稿:堀江敏幸 アートディレクション:小野英作