久しくご無沙汰だったプチグラ切手部。いよいよ再始動です!
小社刊『IT'S A STAMP WORLD! 〜切手に恋して〜』の刊行から2年、満を持しての展覧会の開催とキノコ切手本『世界のキノコ切手 〜around the world with a mushroom stamp〜』が6月に発刊決定!しかも、写真評論家として名高い飯沢耕太郎さんが著者!? というわけで、脈々と培養されてきたキノコ切手菌が、いよいよ白日の下にさられます。毒はないけど常習性は大アリ。心して楽しんで下さい!

ロングインタヴュー第2回目の今回は、そんな「キノコ切手コレクター」として飯沢さんにスポットをあて、様々なお話をうかがいました。
なぜキノコに惹かれるのか、キノコ切手の真の面白さとは・・・
キノコの魅力に取り憑かれた、日本を代表する写真評論家の知られざる一面を覗き見ることのできる、プチグラならではのスペシャルインタヴューです!

飯沢耕太郎 / いいざわこうたろう profile
1954年宮城県生まれ。1977年、日本大学芸術学部卒業。日本を代表する写真評論家として幅広く活動中。5000枚以上のコレクションを持つ有数のキノコ切手コレクターでもある。著書は、1996年に発表した詩集『茸日記』(三月兎社)のほか、『デジグラフィ―デジタルは写真を殺すのか?』(中央公論社)、『写真について話そう』(角川書店)、『フォトグラファーになるには』(山内宏泰氏と共著/ぺりかん社)など多数。

『魅惑のキノコ 〜切手と図鑑で巡るキノコ紀行〜』展
2007年5月25日(金)〜6月6日(水)まで、ロゴスギャラリーにてキノコの展開会開催!

開催場所:ロゴスギャラリー 渋谷パルコ パート1・B1F
       〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町15-1
       Tel.03-3496-1287
開催期間:2007年5月25日(金)〜6月6日(水)
       10:00〜21:00 最終日は17:00にて終了します。
会期中無休 入場無料

著書紹介〜これを読めばアナタも“菌友”の仲間入り!?〜

『歩くキノコ』

著者:飯沢耕太郎(水声社)
ナイロビ、モンバサ、ザンジバル、アテネ、イスタンブール・・・。キノコに“取り憑かれた”飯沢さんが、世界を歩き続けた6ヶ月を綴った旅エッセイ。

『茸日記 Mushroom Diary』

著者:飯沢耕太郎 (三月兎社)
1996年に発表された詩集。収録された19編の詩とあとがきから、評論家だけではなく、芸術家・飯沢耕太郎としての非凡な才能を感じ取ることができる。途中に挿入されている飯沢さん自身によるキノコのアート作品も必見。

『都会のキノコー身近な公園ウォッチングのすすめ』

著者:大舘一夫 (八坂書房)
都市の中で観察できるキノコを取り上げ、その生態や習性を解説。キノコを通じて都会における自然の楽しみ方を提示する。キノコを知ると、身近な世界が変わる。目からウロコの一冊。

『都会のキノコ図鑑』

著者:大舘一夫、長谷川明、都会のキノコ図鑑刊行委員会 (八坂書房)
身近なキノコ267種類を取り上げて、幼菌や成菌、胞子、傘の裏など、様々な写真で紹介。身近なキノコ図鑑の決定版。『都会のキノコ』と併せて読むと理解も深まり楽しさ倍増。


index
  • 飯沢耕太郎とキノコ〜出会いとその魅力〜
  • キノコ切手に目覚めたわけ〜ベトナムと中国で〜

飯沢耕太郎とキノコ〜出会いとその魅力〜

一「キノコ」というものに興味を持たれたきっかけを教えてください

突然「取り憑かれた」みたいな感じになったんです。20年くらい前に絵の展覧会をやることになりまして、その準備で気持ちがドローイングに向かっていた時に、「キノコの形で何か描いてみよう」と思った。50枚くらい一気に描きましたね。

一もともと植物学への興味や知識はあったのでしょうか?

全くないです。小さな頃、植物に興味があったとか、昆虫採集をしていたという記憶もない。だから自分でもなんでキノコだったのかというのは未だによくわからないんだよなぁ(笑)。「降ってきた」とか「取り憑かれた」としか言いようがない。

たしかに、ジョン・ケージ(註1)の作品や中沢新一(註2)『雪片曲線論』の中にキノコが登場していて、そういったところから何かしらの刺激を受けたということはあるかもしれません。ただ、それとは別に、フォルム的にも惹かれるものがあったのだと思う。だから、キノコのどこが好きかといったら、形がおもしろい、存在が変だ、繁殖する、というところかな。

註1)偶然性の音楽『4分33秒』で著名なアメリカの現代音楽家。キノコ好き。イタリアのキノコのクイズ番組で優勝したこともあるほど
註2)宗教学者、哲学者、文化人類学者。『雪片曲線論』は1985年に出版された

一「菌」だ、というところも…

そう、菌。形が定まらないでしょう。菌糸が伸びてキノコの形になってまた胞子を飛ばしてという生態的な変化に惹かれるんですね。流動的に変わっていくものは楽しいなと思います。キノコについてよく色々な本を読んだり調べたりするけど、なんとも変なもんだよね。世界最大のキノコって菌糸が何キロにも広がっているらしいよ。

一そんなものあるんですか!?

アメリカの砂漠かどこかに生えているらしいよ。『歩くキノコ』(註3)の付録に出てた(と言いながら、早速『歩くキノコ』を開いて調べる)「世界最大の生物。ミシガン州の広葉樹林で見つかった。ナラタケの1種で15ヘクタールの広さに菌糸を伸ばしていた。総埋蔵量は100トン」!ていうようなものがあるらしい(笑)こういうのを知れば知るほど面白いよね。

註3)飯沢耕太郎『歩くキノコ』(水声社、2001年)。旅のエッセイ集。付録に『キノコ通信』(創刊最終号)がついている。

一植物でもないですし、動物でもない。

そう、だから植物と動物の間なんだよね。そういう存在そのものが魅力的。

一それをお仕事にするようなお気持ちは

それはだからほら仕事っていうとねぇ(苦笑)。でも僕の部屋なんかもそうだし、写真集が増殖しているようなもんだから。なんていうか、キノコ的な存在の在り方っていうのに僕の生き方や生活がピッタリくるということはあるんじゃないかな。

かわいらしくて、エロチックで、グロテスク

ただ、基本的に僕はキノコの形と色が大好きなんだと思います。

キノコは昔から男性器の比喩として用いられてきましたよね。エロチックで、見方によっては可愛らしくてグロテスクでもある。一つの範疇におさまらない。でも僕は女性器でもある、と思っているんです。ひっくり返すとヒダがありますよね。このヒダの部分がどうも怪しい。この男女両性具有的な要素をキノコは持っていて、それがたまらないんです。

色もすごく渋い色から原色まで色々ですが、どれもキノコ色としか言いようがない色で、そこがものすごく好きです。絵の具では出せないような色。

アミガサタケ

ツチグリ

乾燥すると外皮が閉じる

ドクツルタケ
※写真はすべて『都会のキノコ図鑑』
(八坂書房)より

一特定のこのキノコが好き、というのはありますか。

あぁ、それはいくつかありますね。アミガサタケやキヌガサタケの類は好きですね。

一あれはいいですね!

非常に繊細なべールを被っているようで。あとはやっぱり、一番ポピュラーな毒キノコのベニテングダケ系にはやっぱり惹かれますね。見るからにキノコって感じだよね(笑)あの怪しさが。
まぁ、普通のなんでもないキノコだって別に悪くはないと思うんですけどね。あと星形の...ツチグリ、コイツもけっこうかわいい。あんまり本物は見たことないんだけど...。あぁ、あとこのドクツルタケもいいよね〜! これ英語名では「デストローイング・エンジェル(Destroying Angel)」って言うんでしょ? 猛毒だけど優美だよねぇ。すごく綺麗だと思う。やっぱり面白いよね、キノコは。

一実際にキノコ狩りに行かれたりすることは?

全くないんですよ。どうも実物のキノコには興味がない。キノコが好きだと公言していると、本物のキノコやキノコグッズをたくさんいただきます。ありがたいけど、正直あまり興味がないんだよね(笑)

一キノコを「食べる」ということに関してはいかがでしょうか。

好きですが、これがまたそんなに執着はありません(笑)おいしいとは思いますよ。これまた、種類によって味は変わりますから一筋縄ではいきませんよね。キノコを食べることの最大の魅力は「毒があること」だと思います。毒があることによって食べることの価値やスリルを生み出している。フグなんかもそうですけどね。

やっぱり毒のあるものってすごく魅力的な食べ物だと思うんですね。「毒キノコ」があるということ自体が非常に面白い。下手したら本当に命をなくしてしまうんですもんね。幻覚性のあるキノコもありますし。人間をどこか別のところに連れて行ってくれる力を持っているのがキノコだと思います。ちなみに幻覚性のあるキノコもまだ試したことがありません。話に聞くとすごいらしいですけど。

一キノコへの対峙の仕方はいろいろですよね。切手を蒐集する方もいれば、ヨーロッパなどでは採取はもちろん料理が盛んですし、顕微鏡で胞子を見るのを楽しむという人もいます。

顕微鏡でみる胞子は綺麗なんですか? 結晶のようなものとか。

一とても綺麗ですよ。結晶のようなものもあります。

へぇ、そうですか。

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