ニューヨークのブルックリン生まれの「ポスタルコ」は、マイク・エーブルソンさんと清水友理さんご夫妻の、紙にまつわるプロダクトブランドです。
小社刊『お手紙ハンドブック』巻末に掲載させていただいた、マイクさんへのインタヴュー。実は、そこに収まりきらない多くのエピソードがあり、ここでそのロングバージョンをお届けします。
ポスタルコ誕生秘話やマイクさんアルバイト時代の話、便箋の代わりになるお気に入りのアイテム、大の手紙好きの友達から届くユニークな手紙など…
郵便や紙への関心が強いマイクさんの新たな一面を垣間みることもできるインタヴュー。
紙、郵便、そして、手紙が持っている魅力について、語ってくれました。

世界は郵便物で繋がっている

紙や郵便を通して人がコミュニケーションをするというのが、すごくいいなと思って。元々、紙という素材にも興味があったし、紙に切手を貼って送り先を書けば、世界中どこにでも届くっていうのは素晴しいと思います。ポスタルコの商品カタログではなくて、自分たちにとって関心のある手紙について調べて、まとめてみようと作ったのが「レターズ」。これがポスタルコの始まりとなったんだ。
昔は、ドイツからアメリカにものを送るとき、経由する各国別々に送料を払っていた。例えば、ドイツ分を先に払って、アメリカで手紙を受け取った人が残りを払っていた。考えてみれば、これは当たり前のことだと思う。通過した国にどのように払うのかという、おもしろい問題でもあるのだけど。それで世界各国、ほぼ共通の送料にしようということで、本部をスイスに設置したユニバーサル・ポスタル・ユニオン(万国郵便連合)という国際機関が設立された。世界に3カ国位、加盟していない国があるけれど、それら以外の世界中の国が加盟しているんだ。人はみな、郵便物が欲しいんだなと分かって、すごく嬉しかった。世界が一つのことに賛成することはまずないのに、郵便物はみんな欲しいんだなって。それくらい、紙や郵便物が大事だということが分かった。世界は、郵便物で繋がっているんじゃないかと思ったよ。

郵便配達を通して感じたこと

学生のときにアルバイトでメールマン(郵便配達)をやっていて、時間内に各家に届けるための道順を書いた地図を作っていたんだ。山積みの手紙をどうやって分けていくかまで。地図に書いた順番で実際に届けに行くんだ。アルバイトを始めた頃、まだ大学生だったから、危ない場所に行かされて、恐い犬がいたりとかもしたけどね。普段はあまり入ってはいけないところなのに、郵便局のユニフォームを着ていると、だいたい何も言われない。郵便物はそれくらい貴重なんだなって。

手紙に付いた跡

紙に関する何かが作れないかという想いがあって、公共サービスとしての郵便局にも興味があって。それで、ポスタルカンパニーの造語で「ポスタルコ」としたんだ。切手だったり、紙の持っている温かみだったり。手紙が旅人みたいにいろんなマークを付けて、受取人のもとにやってくるように。
手紙が届くと、実はその手紙は、送られてきた場所の素材でできているんじゃないかって思うんだ。インドから届いた手紙だったら、インドの一部が削れてきたんじゃないかって。配達の途中でいろんな跡が付いたり、郵便局の人が手紙を落としたらシワが入ったり、全ての跡が付いてくる。インドの一部が旅してきたのかなって。そういう意味で、手紙は他のものと違うなと思う。今、郵便のシステムはスムーズになったけど、そんな便利なシステムがなかった昔にも、手紙はあったんだよね。紙はこすれたりして、味わいが増し、より紙っぽさが出てくる。手触りは英語で「hand」。手と同じくらい紙の手触りはおもしろいんだと思う。

手紙を送る意味

最近、メールが多くなってきたんだけど、手紙を書くのは好き。メールがどんどん使いやすくなってきたとは思うけど、メールを書くときに、手紙を書いているように書きたいって思うようになってきた。メールって、電話の代わりに話しているように書くじゃない。どんどん電話に近くなっている。でも、メールでは伝えたくなかったりすることもあるよね。メールで伝えていいのかなって思うことは、時間がかかっても自分の中にとっておいて、手紙で書く方がいいのかなって。サンキューはメールで書くのと手紙では全然違う、同じことを言ったとしても。相手がどれくらい本当に思っているのかという、受け取る人の感じ方が違うんじゃないかな。

テレビとラジオ、メールと手紙

ラジオが普及して、その後にテレビが普及した。けれども、テレビが普及したからといって、ラジオが消滅したわけではなく、ラジオを使うシーンがより明確になった。仕事をしながらラジオを聞いたり、車を運転しながらラジオを聞いたり。ラジオにしかできないことは何なのか、よりラジオっぽさが見えてきた。手紙も今、そういうところに来ているのだと思う。手紙で全てやりとりしていたのが、スペシャルなときに限定されて使われるようになってきた。写真が世に生まれたとき、絵画が思っていることを表現するためのものに変わったと聞いたことがある。それまでは、この街はこういうところだと記録する写真の代わりに絵を描いていた。けれども、写真が誕生したからこそ、絵も生まれ変わることができる。そういう意味で、手紙の良さも見直されているんだと思うね。ただメッセージを伝えるだけじゃなく、作る楽しみだったり、今まで当たり前だったことも手紙としてもらうことで、相手が時間を分けてくれたんだって。忙しい中で紙を選んで、封筒を選んで、時間をかけて書いてくれたんだって思うと本当に嬉しい。

切手で遊ぶ

どこにいても手紙が書ける、ポスタルコのレターライティングセット。

海外に送るものだと普通の封筒でも300円位で、1枚の切手じゃおさまらないから小額切手をたくさん貼ったり。そんなふうに工夫するのが楽しい。古い切手や新しい切手を使ったり、相手が好きそうなものを選んだり。
一番使いやすい切手は、レターライティングセットに入れて、すぐ使えるようにしているよ。最近電車の中で書いていたら、いいやつ全部使っちゃった。いい切手がないから、その代わりに絵なんか書いて(笑)、普通の切手で申し訳ありませんって。切手をシンプルにしたいときもある。日本のスタンダードな切手も好きだよ。80円切手はあまり好きじゃないけど、110円切手は好き。こういう斜めの線とか。10円切手もすごくいい。珍しくない、普通っぽさもいいと思う。気分によってだよね。

手紙のためのものではないものを使う

ポップ用のカードをメッセージカードに。

なんでもいいと思う。僕は、手紙用のものではないものを使うのが好き。串田孫一さんが「人が使う文房具は、文房具屋さんに売っていないものだ」と言って、紙袋に書いたり、周りにあるものを工夫して使っていたんだ。そういうのが好き。これもこの間、古い文房具やさんで見つけたんだ。ポップ用のカードに「お世話になりました」と書いて、メッセージカードにするの。結構かわいいよ、文字を入れるといい感じになって。タカと書いてあるけれど外国人には読めない。ただの柄みたいに見える。手紙としては短いけれど、一言だけ添えてギフトカードにして使うんだ。
長い手紙を書くときもあるよ。1枚におさまるかなと思って、ポストカードに書き始めると、おさまらなかったり。そんなときは、ポストカードを3、4枚にして、写真も同封したり。そういうのも楽しいよ。受け取る人も楽しいと思う。友達もそうやって送ってくることもあるしね。ビンテージのポストカードと新しいものを同時に送ったり。

手紙ができてからポストに入るまでの時間

日記みたいになるときもあるよね。書いて、しばらく経っちゃって、日にち変えて、またしばらく経っちゃったり。なかなか送らずに、ずっと持ち歩いたり。手紙を手渡ししようと思って持ち歩いてるうちに、ぼろぼろになることがあるんだけど、それは郵便局のせいにしようかなと思ってる(笑)。配達している途中に、ぼろぼろになったのかなって。手紙が完成したときとポストに入れる間の時間って楽しいよね。投函した後も、ちゃんと届いたかなって思う。ポストに手紙が入った音を聞くと安心するんだ、コトコトって。ちゃんと入ってるなって。

業務用の揚げ物用袋を封筒にしても。

神秘的な鍾乳洞や美しい立方体の塩のクリスタルのポストカード。

手紙に使える掘り出しもの探し

お店に置いたらおもしろいんじゃないかというものを、この間も見つけた。業務用の揚げ物用袋。すごくきれいな袋で、これを折ると封筒になるんじゃないかと思って、たくさん買っちゃった。文房具屋、古本屋とか、あちこちにある小さな店に立ち寄ると、本当は時間がないときでも1時間くらいすぐに経っちゃうんだ。
古いポストカードが好きで、昔の日本の電気機器のものとか。こういう写真も、すごいテクノロジーでしょと自慢しているみたい。今は当たり前に使用している電気機器も、当時としては偉大な発明だったんだもんね。